昨日、子供の庭プールに激怒した隣人がモスキート音で対抗したことがニュースになりました。騒音トラブルに発展する可能性があるモスキート音について解説します。
モスキート音とは?その名前の由来
モスキートは、米国で開発された超高周波を使った音響機器の商品名ですが、読んで字のごとく、「Mosquito(モスキート)=蚊」の音です。モスキート音は、「蚊が耳元で飛んでいるような感じ」で17,000Hz以上の超高周波数の音を指し、苦痛を伴う不快な音です。 この高周波の音は、特に10代や20代前半の若者にはよく聞こえるのに、年齢を重ねると次第に聞こえなくなります。
モスキート音による健康被害は?
モスキート音自体が健康に重大な影響を与えるという明確な証拠はまだ十分にありませんが、以下のような健康影響が懸念されています。
- 耳への影響
長時間高周波音にさらされると、一部の人には耳鳴りや耳への圧迫感、不快感を引き起こすことがあります。感覚が敏感な若者や子供は特に影響を受けやすく、耳に痛みを感じる場合もあります。 - ストレスや不快感
モスキート音は不快感を与えることが多く、長時間聞かされることでストレスが増加する可能性があります。これにより、集中力の低下やイライラなどの心理的な影響が現れることもあります。 - めまいや頭痛、疲労感
一部の人はモスキート音に長時間さらされると、めまいや頭痛、疲労感を感じることがあります。特に、敏感な耳やストレス耐性が低い人にはこうした症状が現れることがあります。 - 子供や動物への影響
モスキート音は子供やペットのような若い動物が特に聞き取りやすいため、子供に対して過剰なストレスや不快感を与える可能性があります。動物も高周波音に敏感で、不安やストレスを感じることがあります。
なぜ年齢と共にモスキート音が聞こえなくなるのか?
年齢とともに聴覚が劣化する原因は、「加齢性難聴」が関係しています。私たちの耳は、高周波数の音を感じ取る有毛細胞という特殊な細胞が働いていますが、この細胞が年を取るにつれて徐々にダメージを受けています。
特に高音域の音は、耳の奥の方で処理されるため、年齢とともにその部分の細胞がダメージを受けやすくなります。その結果、若い人にしかモスキート音が聞こえないという現象が起きます。
そのモスキート音、あなたも聞こえる?
インターネット上には、モスキート音がどれだけ聞こえるかを試すことが出来ます。多くのサイトやアプリで自分の耳年齢を測ることができるので、試してみてはいかがでしょうか。 例えば、17kHz、18kHz、19kHz、20kHzの音を順番に再生して、その音が聞こえるかどうかで自分の聴覚年齢を推測できます。
モスキート音は動物に聞こえている?
モスキート音は人間だけでなく、動物にも影響を与えるのか?実は、犬や猫といったペットも、高周波数の音に敏感なため、モスキート音を感じ取ることができると言われています。犬の聴覚は人間よりも広範囲の音域をカバーしているため、モスキート音に反応することがあります。
ただし、動物がこの音をどのように感じ取っているかはまだはっきりしていませんので、ペットを持っている人にとっては、家でモスキート音を流すのは避けた方が良いかもしれません。
また、ネズミやカラスなどにもモスキート音は感じ取ることができると言われています。
モスキート音は計測出来る?
モスキート音は高周波音(通常は17kHz〜20kHzの範囲)なので、計測するためには以下のような特定の機器やツールが必要です。
- 高周波対応の音響測定機器
一般的なマイクや音響計測機器では、モスキート音のような高周波数帯域の音は拾えない場合があります。したがって、**高周波数対応の音圧計(騒音計)**が必要です。これらの機器は通常、人間の耳が聞こえる範囲を超える周波数(20kHz以上)も感知できるように設計されています。- 騒音計(サウンドレベルメーター)
周波数を幅広く測定できるタイプのものが必要です。安価な騒音計では高周波数を検知できない場合があるので、モスキート音を正確に測定したい場合は、高精度なものを選ぶ必要があります。
- 騒音計(サウンドレベルメーター)
- スペクトラムアナライザー
モスキート音の周波数成分を詳細に分析するためには、スペクトラムアナライザーという装置を使うことも有効です。これは、音の周波数分布を視覚的に表示し、どの周波数帯域の音が発生しているかを確認できます。モスキート音が特定の周波数に集中している場合、そのピークを簡単に確認できます。 - スマートフォンアプリ
最近では、スマートフォンでも高周波音を計測できるアプリがありますが、スマートフォンのマイクは一般的に20kHzまでの音を正確に拾えないことが多いため、精度に限界があります。もしスマートフォンを使う場合は、外付けの高周波対応マイクを使用すると精度が向上します。 - オシロスコープやFFT解析ツール
高周波音の測定には、オシロスコープやFFT(高速フーリエ変換)解析ソフトを使うこともできます。これらは音の波形や周波数成分を詳細に解析できるため、モスキート音の特徴的な周波数帯を明確に確認できます。
モスキート音の発生装置は?
検索エンジンで”モスキート発生器”と検索する、ネズミ避けなど用途別のモスキート発生器が出てきます。また、モスキート音を出すアプリやYoutubeなどもあります。
モスキート音はどんな場面で使われているの?
若者にしか聞こえないという特徴を利用して、若者がたむろするのを防ぐために、店舗の外でモスキート音を流しているケースがあります。モスキート音は、実際に商業的や公共的な場面で活用されています。
また、ネズミやカラス、野良猫よけなどでもモスキート音を活用しているケースがあります。
- 自治体
東京都足立区では公園の治安対策として、夜間中高生たむろしにくい環境を生み出すために「モスキート音」の出る機器を試験運用で設置しました。導入に際しては、モスキート音による健康被害が出ないか?近隣住民に迷惑が掛からないか?などを検討し、説明会や公園内への看板を設置するなど慎重に行ったとしています。
試験結果は、中高生がたむろしにくい環境になったようです。しかし、これがモスキート音の効果だけではなく、テレビや新聞で大々的に取り上げられたことにより、区民に関心が高まった二次的効果もあるそうです。
なお、試験運用では、健康被害などは出ていないとのことですが、本格的運用は行わず試験運用で終了しています。 - 商業施設
さまざまな商業施設でモスキート音が確認されています。その多くは、若者に対してではなく、ネズミ避けに「モスキート音」の出る機器を設置している例があります。 - 農地
農地の畑に害獣が侵入してくるのを防止するために「モスキート音」の出る機器を設置している例があります。 - 個人宅
猫やネズミ避けとして「モスキート音」の出る機器を設置している例があります。
モスキート音が社会に与える影響
モスキート音の使用には賛否両論があります。一部の公共施設や店舗では、若者のいたずらやたむろを防ぐために、モスキート音を利用している場所もあります。
しかし、これには批判の声も上がっています。「若者差別だ」「人権侵害だ」という声も少なくありません。 一方、商業施設でのネズミ避けや、農地での害虫避けなどで活用されている事例もあります。
まとめ
モスキート音は、若者にしか聞こえない高周波音(17kHz以上)で、主に騒音防止や防犯目的で使用されます。年齢とともに高周波を感じ取る耳の有毛細胞が劣化するため、年配者には聞こえにくくなります。
モスキート音は耳への不快感やストレス、頭痛を引き起こす場合があり、動物にも影響を与える可能性があります。公園や商業施設での若者対策や害獣避けに使われる一方、若者差別や人権侵害として批判されることもあります。
モスキート音を発生させる場合は、社会に与える影響があることを十分に理解してください。